MASK、復活ワンマン公演の場で、死地から生還したMICHIRUが届けた「命を大事に1日1日を大切に生きてください」というメッセージ。

長澤智典

2019.03.13 12.58

 本来だったら、昨年に行うはずだったMASKの15周年記念の単独公演。だが、MASKのリーダーMICHIRUが昨春に生死を彷徨う病に罹り、自体は急変した。ライブを行うどころか、MICHIRUは昏睡状態の中から目覚めるのか。たとえ息を吹き返しても、果たして社会復帰出来るまで意思や身体を取り戻せるのかという窮地にまで陥っていた。
でも、音楽の神様はMICHIRUを手放すことはなかった。たとえ命を長らえても、まともに動けるようになるまでは早くても半年以上はかかると言われていた中、彼は病気による後遺症もほとんどないどころか、急激に回復の道を辿り、夏前には退院するまでになっていたのは、本人もいろんなところで語ってきたようにご存じの方も多いだろう。
 彼が、こんなにも早く復活した要因の一つとしてあったのが、「絶対にアーティストとして舞台に復帰することが自分の使命であること。それは、MASKのメンバーとして舞台に立つことだ」という強い意思。その目標として掲げた日が、3月3日(日)にTSUTAYA O-EASTで行われたMASKの15th ANNIVERSARY YEAR LIVE「生還祭-2019-」という場だった。
MICHIRUの生還を祝福しようと全国各地からMASKER(ファン)たちが集結、2階席へ立ち見客が出るほどの大盛況だった。社会復帰しているとはいえ、まだまだ体力や体調面が優れないMICHIRUが最後まで舞台の上に立って演奏をやり遂げることが出来るのか…。そんな心配も抱えながら、「生還祭」は幕を開けた。

MICHIRUの生きる意味は音を奏でること。感情を剥き出しに黒い狂気を描きだす第1期MASK。

先に登場したのが、AOI+SANA+MICHIRU+KAZUTAKE+NANAによる第1期MASK。MASKの持つ狂気/凶暴な面を表出したバンドのように、冒頭を飾った『Gemini』から彼らは妖しくも激しい演奏を繰り出し、フロアの中へ熱狂を描き出した。前のめりな体勢で観客たちへ挑みかかるAOI。その横にはMICHIRUの姿も。触れた人たちを暗黒の宴へ誘う彼らは、けっして攻撃の手を緩めない。続けざま『赤裸々ノイローゼ』を繰り出し、フロアへ感情と感情をぶつけあう様を描きだす。「嫌い嫌い大嫌い」と歌い、叫ぶAOIの姿には、葵として見せる優しさなど微塵もない。意識の螺子を狂わす音の上で、狂気導く道化師と化したAOIのその様は刺激的だ。ポップな表情を魅力する第2期MASKと対比した場合、第1期MASKがなんと邪悪な姿を持って見えていたことか、そのギャップへ、今更ながら心震える戦慄を覚えていた。
「MICHIRUさんが生と死の狭間から甦ってきました。僕たちが出来ることは、MICHIRUさんの生きる場所はこのステージなんだということをしっかり彼の身体に焼き付けて、またMICHIRUさんと共に音楽をやり続けていくこと。みなさんの声と笑顔でMICHIRUさんを支えてください。MICHIRUさんも儚くも美しい音色を、狂気を持って奏でていくと思います。みんなも虜になってください」(AOI)
天高く突き上がる無数の拳。AOIは、指先に結んだ赤い糸を垂らしながら『赫い盲目』を歌いだした。AOIを先導者に、意識を妖しく魅了する音を通し、第1期MASKは満員の観客たちを激しさと甘美が交錯する宴の中へ連れ出した。その赤い糸の先を繋ぐように、誰もが心の手を舞台へと伸ばしていた。SANAの猛り狂うギターの演奏を合図に、楽曲は狂気を秘めた美しさと浪漫を携えた『ためらい自殺信号』へ。短いブロックごとに第1期MASKは、自身が持っている黒い狂気の美学を、いろんな視点から描き出していった。
「MICHIRUさんの生きる意味って、音を奏でること。俺たちに出来ることは名前を呼ぶことじゃないか」、AOIの声を受け、フロアから「ミッチー!!」と叫ぶ声が次々飛び交いだす。
 妖しくも甘美な表情を切り裂くように、第1期MASKが突きつけたのが『東京トリックシアター』。激しく攻める演奏に触発され、沸きだす気持ちを全身でぶつける観客たち。サビで見せた哀切な歌に心惹かれつつも、AOIの感情的な歌声に導かれ、観客たちも理性という言葉を何時しか頭の中から消し去っていた。 ギラついた音の刃を剥き出しにメンバーたちがぶつけたのが『XxxXマスター』だ。SANA、KAZUTAKEが舞台上を駆けまわれば、AOIが「あたまー!!」と観客たちを煽り出す。胸くすぐる美しいメロディと狂気を携えた演奏が交錯してゆく。第2期MASKにも繋がる胸を焦がす歌という魅力を携えつつも、第1期MASKだからこそ描き出せる狂気と耽美を重ね合わせた黒い衝撃が身体を貫いていた。
「生きてるかー!!」、観客たちを激しく煽るAOI。「色鬼始めましょう」、第1期MASKが最後に突きつけたのが『色鬼』。つねにフロアの中へ感情振り乱し暴れる光景を描き続けてきた楽曲だ。「鬼さん」「こちら」「手のなる」、終わることを忘れたように煽り続けるメンバーたち。フロア中に生まれた逆ダイの光景に、きっとMICHIRUも「生きる力」を授かっていたはずだ。『色鬼』ではMICHIRU自身も前へ出て煽っていた。それ以上に、狂ったようにギターを掻き鳴らすSANAの姿が鬼神と化していた…。フロアをグチャグチャに掻き乱しライブの幕を閉じてゆくところも、感情を剥き出しに黒い狂気を描きだす第1期MASKらしさ。その神髄を、この日もしっかりと見せつけていった。

第2期MASKが伝えた、生きている限りは未来へ向かって何度だって飛べるんだという希望。

JIN+SANA+MICHIRU+KAZUTAKE+MINAMIによる第2期MASKのライブは、胸をくすぐる『優しい嘘』からスタート。解放的な楽曲の中へ哀愁を忍ばせたスタイルに、第2期MASKらしさを実感。あの頃、歌ものヴィジュアル系と呼ばれていた多くのバンドの中から、何故MASKが勝ち上がったのか。ぞの理由を改めて実感させる楽曲だ。
続く『Boys be ambitious』を通し、MASKは一気に感情のアクセルを吹かし、観客たちを激しく煽りだした。同じ切り刻むでも、第1期MASKとは異なる解放感や光を与えるところが第2期MASKの特徴だ。フロアには早くも大騒ぎする光景が描き出されていた。「もっとアゲろや!!」、JINの煽る声に続いて『世の中の日常で頻繁に起こる今ではごく当たり前とされている出来事』を演奏。歪んだ音の塊が会場中を支配する。小さな身体を思いきり捻り、前のめりの姿勢で客席を見つめ歌うJIN。第2期MASKのライブへつねに描き出されていた笑顔で暴れる光景が、そこには生まれていた。
JINが拳を振りまわすのを合図に飛びだしたのが、『ドラマ』。スリリングな演奏と温かな歌が交錯。SANAの冴え渡るギターの上で、JINが儚さを抱いた歌声を響かせる。身体は熱を求めながら、心は、緩急巧みに色を変えてゆく感情的なJINの歌に惹かれていた。『会いたくて』を通し第2期MASKが描いたのは、今にも壊れそうな弱さと切なさ。痛い気持ちが募るほど、繊細ながらも力強い演奏が嘆く気持ちを後押ししてゆく。切ない物語へ色を差してゆく手腕は、流石だ。切なさへ想いを塗り重ねるように、第2期MASKは『C』を演奏。なんて哀愁を抱いた歌だろう。改めて哀切なドラマを描き出すJINのヴォーカリストとしての表現力の高さに心が引き込まれていた。
厳かに幕を開けながら、次第にその音は熱と狂気を帯びてゆく。己の感情をダイレクトに投影したMINAMIのドラムソロ。彼の演奏に、KAZUTAKEが、MICHIRUが、SANAが音を重ね、JINが「オイオイ」と煽りを加えだした。ふたたび熱を帯びる場内。その熱を爆発させようと、第2期MASKは『求めたゆえに残ったもの』を披露。激しく突き刺さる演奏に触発され誰もが跳ねれば、JINの煽りに合わせ身体を揺らしていた。この日のJINは、極力MICHIRUへの負担を減らしつつも、煽る熱気を会場内へ作りあげることで、MICHIRU自身にライブという場が作り上げる限界を超えた力を、改めて甦らせようとしていた。
 会場に生まれた熱へさらに激しい刺激を加えようと『Live is my Life』をぶつけ、フロア中に黄色い絶叫を作りだす。「踊り明かそう朝まで 声を聞かせて」と歌うJIN。重厚な音を突きつけ、熱狂のパーティへ誘う演奏陣。誰もが生きている証を刻もうと感情をぶつけ、暴れていた。荒ぶる勢いへ拍車をかけるように、彼らは『ローズマリー』を披露。身体を嬉しく騒がせる楽曲へ飛び乗り、観客たちが全力で跳ねだした。TSUTAYA O-EASTの床を踏み鳴らした衝撃は、思いきり会場を震撼させんばかりの勢いと熱を生みだしていた。騒ぐ観客たちとは裏腹に、しっかり歌を届けるJIN。彼の煽りに触発させ、跳ねる勢いが増してゆく。とてもつかみを持ったキャッチーな歌なのに、身体はもっともっとと熱を求め続けていた。
 「声を聞かせてくれー!!」、最後に第2期MASKは『未来への翼』をプレゼント。左右に走るJINの動きに合わせフロアに生まれたウェーブも懐かしい光景だ。途中には、会場中の人たちが左右の人たちと手を繋ぎ揺れたり跳ねたりと、同じ仲間として一体化し騒ぎだす様も見せていた。ファンたちが繋いだ両手を上げる瞬間、それは無数の羽ばたく翼にも見えていた。誰もが両手を翼変わりに、笑顔で熱狂。生きている限りは未来へ向かって何度だって飛べるんだという希望をMICHIRUの心にも届けていた。きっとMICHIRUの心の背中にも、未来へ羽ばたく翼が映えていたはずだ。

みなさんも命を大事に1日1日を大切に生きてください。それが、MICHIRUからのメッセージ。

 「生きていてくれてありがとうございました。みんなの声が一番のリハビリになったと思います」。JINの声を受け、アンコールで第2期MASKは『桜』を演奏。胸をキュッと潤す哀切な歌とはいえ、鮮やかな音色に乗せ、新しく道を描き始めるMICHIRUへエールを贈るようにJINは歌っていた。何より、華やかさをまとった演奏と心の琴線を刺激する歌に、素直に酔っていたかった。
 演奏終わりに、メンバーから嬉しいサプライズが。2日後に誕生日を迎えるMICHIRUのため、JINが、会場中の人たちが「HAPPY BIRTHDAY」を歌いだした。その歌に合わせAOIとNANAが花束を持って登場。そのサプライズに、MICHIRUの頬からは温かい涙が流れていた。
「本当にありがとうございました。生きてるって凄いなというのをいろいろ感じ取れたので、みなさんに感謝しています。みなさんも命を大事に1日1日を大切に生きてください。自分も第二の人生だと思って生きるので、今後ともよろしくお願いします」と、MICHIRUが涙混じりに言葉を述べてくれた。「MICHIRUさんに元気になってもらって、来年もMASKをやったらみんな来てくれるか」とJINが語ったように、今年いっぱいMICHIRUはリハビリに専念。来年には、さらに元気になったMICHIRUとして。何より、MASKとしてその姿を見れることを期待したい。
最後はAOIとNANAも加わり、7人編成のMASKとして『空』を演奏。心に輝きを注ぎ込む楽曲に合わせ会場中の人たちが無邪気にはしゃぎ出す。横でギターを奏でるMICHIRUに向け、想いを届けるように歌うJIN。その横ではAOIが一緒にはしゃぎながらエールを贈れば、2人で「君が好きだったこの空 ずっとずっと忘れないから」と共に歌う場面も。終盤には、会場中の人たちと歌に参加。MICHIRUもお立ち台の上に乗りJINに寄り添えば、何時しかMICHIRUのまわりにメンバーたちが寄り添い、一緒にフロア中で揺れる無数の大きな手の花を笑顔で見つめていた。

  MICHIRU自身は、まだまだ完璧ではない状態だ。だけど、この舞台の上にMICHIRUが戻って来てくれたことが何よりも嬉しいじゃない。ライブ中にJINも語っていたように、今年いっぱい身体の治療に費やしてゆく。MICHIRUがベストな状態へ戻った来年には、さらにパワーアップしたMASKとしてライブを行えば、こうやって一緒にはしゃげることが、希望でなく現実になることを願いたい。最後に、メンバー一人一人と抱き合い感謝の気持ちを贈るMICHIRUの姿も愛おしかった。「みんなも命を大切にしてください」。最後にMICHIRUが届けたその言葉、ぜひ、あなたもその意味を改めて考え、噛みしめていただけたら嬉しく思います。


PHOTO: 折田琢矢
TEXT:長澤智典

MASK  twitter
https://twitter.com/mask20160501
MASK Web
http://loopash.com/

セットリスト
-MASK第1期-
『お通しパレード』
『Gemini』
『赤裸々ノイローゼ』
『赫い盲目』
『ためらい自殺信号』
『東京トリックシアター』
『XxxXマスター』
『色鬼』


-MASK第2期-
『WE ARE MASKER』
『優しい嘘』
『Boys be ambitious』
『世の中の日常で頻繁に起こる今ではごく当たり前とされている出来事』
『ドラマ』
『C』
『会いたくて』
『求めたゆえに残ったもの』
『Live is my life』
『ローズマリー』
『未来への翼』
-ENCORE-
『桜』
『空』

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